「はぁっ…はぁっ…!!」


烏羽は千姫神社に急いでいた。


「先生! 一体どうしたの!?」


愛美が必死に追いかけるが、烏羽は答えない。
答えている暇が無かった。


(どうしてすぐ妖怪の気配に気付けなかったんだ!!
洸大に何かあっては、俺の存在の意味がない!)



烏羽は階段を駆け登り急いで裏倉庫へ向かうと唖然した。
裏倉庫はそこらじゅうがボロボロになっており
中からは何かが壊れる衝動音が響き渡っていた。



「洸大!!」



烏羽が倉庫へ入ろうとした時だった。
裏倉庫からとても強い光が飛び出してきた。


「な、なんだ・・・・?」

「光…!?」


黄色く、そして神々しい光。
何が起こっているんだ…!?



光は10秒くらい光っていると、一瞬にして消えていった。



ハッと我に返って裏倉庫へ向かう。
中に入ると、入り口付近で倒れている洸大を発見した。


「洸大!!」


愛美が飛んで洸大の元に駆け寄る。
続けて駆け寄った烏羽が洸大を抱き起こした。


「洸大! おい、洸大! しっかりしろ!」


返答が無い。
洸大の胸に耳をかざすと、ドクンドクンと心臓の音が聞こえる。

よかった…死んで、なかった…!!


「洸大! 洸大!」

「・・・・・・・・・」

「ねえ洸大! 起きてよ洸大!!」

「・・・・・・うっ・・・・・」

「洸大!!」


愛美の必死の声が届いたのか、洸大は意識を取り戻し
そっと目を開けて、烏羽と愛美を見た。


「姉貴…烏羽、さん…」

「洸大! よかった…」

「姉貴…! 妖怪は!?」


洸大は思い出したように立ち上がると、倉庫内を見渡した。


いない…跡形もなく、消えている…。


「洸大、妖怪って…ここに妖怪がいたの?」

「ああ、とても大きいのが…。
でも、どうして…」


「おい…あそこに誰か、いる」



烏羽の指した方向に、全員の視線が集中した。



「あれは…!」


「おんなの、こ…?」





3人が見たそこには巫女装束のような格好をしている
小学生くらいの女の子が笑って立っていた。



耳のようにとがった髪の毛。
尻尾が生えていて、それは全部で9本。




「まさか・・・・・・・九尾・・・・・・?」





洸大がそう呟くと


女の子はニッコリと微笑んだ。








第1話 たまご 了



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