『どこだ…どこにいった…!!!』


俺の後ろで、妖怪が歩きながら俺を探している。
少し離れたかと思うと、止めていた息を少し吐き出した。

倉庫が広くて、助かったのかそうじゃないのか。

ここまで暴れておいて、なぜ誰も助けにこないのか。


不可思議な事がたくさん考えられるけど
とりあえずそんな事は今はどうでもいい。



(せめて、せめてお札か何かがあれば…!!)



妖怪に見つからないように倉庫内を見渡した。
割れた壷、置物、巻物と
どれも退治するには使えないものばかり。


何千年もの前から置いているというのに
もっとマシなものを保管しとけよって話だ。




「・・・・・・ん?」




あらゆる所を探していると、何かが目に入った。





倉庫の奥に、何かがひっそりと置いてある、ある物。



「あれは・・・・たまご・・・・?」




たまごといっても、ニワトリのたまごのような物ではない。
ダチョウのたまごのような、とにかくとても大きいたまご。



さっきまで気付かなかったが
大きなたまごが、倉庫の奥そこにあった。




「なんだ、この感覚は」



まるで「探していたものが見つかった」ような
そんな不思議な感覚。

たまごを見ていると、そんな感覚になった。



そして、何かが俺を奮わせる。




あのたまごが孵ったら…俺は、死なないと。




『見つけたぞ…千輝姫!!!』



「!!」



妖怪は俺のすぐ後ろまでやってきていた。
俺を見て、勝ち誇った笑みを浮かべている。




足が、動かない。
ヘビに睨まれたカエルの状態とは、この事か。


動かなければ、俺は死ぬ。
そうわかっているのに、動かない。




『死ねェエエエ!!!!!』




「目覚めろ、九尾!!!!!」



妖怪が腕を振り下ろし、やれると思った瞬間
俺は無意識にそう叫んだ。





その時、俺の後ろが急に眩しく輝いた。



『な、なんだ!?』


妖怪はあまりもの眩しさに、後方へ立ち退いた。
振り返ってみると、強い輝きを放っていたのはあのたまごだった。




たまごはバリッバリッと音を立てて、ひび割れていく。


たまごの割れ目からも、強い光が出ている。





(契約により、貴方の助けになる事を誓おう)





夢で聞いたあの声が、また頭の中に流れる。




「!」




無数の割れ目が出来ると、たまごは勢いよく割れて
中からとても大きな光の玉が現れた。


あまりにも強い光に、目を開けていられなくて目を閉じる。



『貴様…ま、まさか!? なぜ、なぜだ!!
何故貴様が…うがぁぁぁぁあああああああ!!!!』






聞こえてきたのは妖怪の驚いた声と、断末魔のような叫だった。



 目次