「長居して悪かったな」

「ううん、楽しかったから気にしてないわ」


気がつけば、空はすでに暗くなり街灯が光っていた。


「じゃ、またな」

「うん」

「結狐、帰るぞ」

「はーい!・・・・あ」


楽しそうに洸大の横に並んだ結狐は思い出したかのように叫ぶと
くるっと織香の方を向き直した。



「お邪魔しました」




ペコッと一礼。

そんな結狐の姿に織香はクスクスと微笑んだ。




「また来てね、結狐ちゃん」

「うん!」

「じゃあな、織香」

「気をつけてね」

「10分も掛からねぇよ」



お互い噴出すように笑うと、洸大は織香に背を向けた。


「おりか、ばいばい!」

「はい、バイバイ」


織香に大きく手を振ると、先に歩き出した洸大の元に結狐は走って行った。


「こうだい、こうだい」

「ん?」

結狐は洸大の手を握ると、空いている片方の手で空を指した。
洸大も釣られて空を見上げると、夜空は満点の星でいっぱいだった。


「学校って、あのお星様みたいにいろんな人がいるんだよね!
結狐、すっごく楽しみ!」


「・・・そっか。
でも、ちゃんと俺達が言ったこと、守るんだぞ」

「わかってるよー。
じゅぎょうちゅーは、立ち歩かない
せんせいの言う事はしっかりと聞いて守ること、でしょー?
あと、気になる物がある時はせんせいに聞く!」

「・・・80点」

「あれー?」

「耳と尻尾の事を聞かれたら、笑顔ではっきり飾りですって言うんだろ。
・・・・これがある意味一番大事なんだからしっかり覚えとけよ」

「? はーい」




能天気な返事に深いため息をつく。


まあ・・・なるように、なるだろう。






何はともあれ、今日で日曜日も終わり明日からは再び学校が始まる。





「(色々大変かもしれないなぁ・・・頑張ろう)」






星空を見ながら、洸大は静かに気を引き締めた。








第3話 パラダイスの幕開け 了


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