「じゃあ、九尾ちゃんを置いてもいいのね?」
愛美が嬉しそうに聞くと、春元は大きく頷いた。
「やったね、九尾ちゃん! 千歳家の新しい家族よ!」
「家族?」
「そう! 家族!」
不思議そうにしている九尾と対して愛美は自分のことのように嬉しそうに笑っている。
そんな姉の姿に洸大は少しだけ噴出した。
「喜びすぎだろ、姉貴」
「だって、心配していたんだもの。
まさかこんな可愛い女の子を祓うなんて言うんじゃないかなって・・・」
「なんじゃ、人を悪者みたいに言いよって! わしを何だと思っとるんじゃ!」
「頑固じじいに決まってんだろ」
「なっ・・・なんじゃと!?」
「ほんとの事じゃねーか!
それに九尾が実際に現れたら祓うとかなんとか言ってたのは事実爺ちゃんだったんだから
姉貴が心配すんのはあたり前だろ!」
「うるさいのー!!!」
「うるさくねーよ!! だいたいなぁ!!」
「あらあら、また始まったわねー」
春元と洸大の言い争いを、全員は微笑ましく見ていた。
ただ一人、九尾だけは訳が分からず、難しい顔をしていた。
「・・・ねえねえ」
「ん?」
となりに座っていた愛美に、九尾は不思議そうに聞いた。
「家族になれるって、どういうこと??」
「それはね、一緒にいられるって事よ」
「どういうこと?」
「洸大とずっと一緒にいられるって事」
「けーやくしゃと? ずっと一緒?」
「そうよ」
「!」
九尾はそれを聞くと、嬉しそうに春元と言い争いしている洸大の元へ走っていき
今にも春元に殴りかかりそうになっていた洸大にダイブした。
「うわっ!」
その衝撃で洸大は勢いよく床に倒れた。
顔面強打したため、怒ってやろうと顔を上げると
目に入ったのは自分の背中に抱きついている九尾の姿。
そしてその顔は、とても嬉しそうな表情をしていた。
「聞いた? けーやくしゃ、聞いた?
九尾達、ずっと一緒なんだって!」
「は?」
「九尾とけーやくしゃは、ずっと一緒なの!」
九尾はそう言ってこれでもかというくらいの笑顔を見せた。
「・・・あ、あっそう・・・」
怒るつもりだったが
その愛らしい顔のせいでタイミングを失い
ただそう言うしかなかった。
「さてと、じゃあお母さん。
今日は腕によりをかけてご馳走にしちゃいましょうかしらね!」
「お、いいねぇ!」
「絵奈さんの料理は最高じゃからのー」
「えぇええ!? なにそれ! 私に対する嫌味なのー!?」
皆が大喜びした中、愛美だけが不満そうな声を挙げた。
「姉貴は幽霊なんだから腹なんて空かねぇだろ〜」
「そういう問題じゃないわよー!」
「九尾、姉貴の変わりにたくさん食ってやれよな」
「うん!」
「うんじゃないー!」
悔しそうに叫ぶ姉貴に、俺達はこれでもかというくらい笑いあった。
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