「たく・・・何考えてるんだよ、母さんは」



ぶつぶつ言いながら、俺は押入れをあさっていた。



「ねえねえ、何やってるのー?」

「お前が学校に通うための持ち物を探してんのー」

「がっこー? がっこーってなあにー?」

「学校っていうのはー・・・あ、あったあった」


洸大が押入れから取り出したのは黒い色のカバン、ランドセルであった。


「ほら」

「?? なあにこれ」

「ランドセルだよ」

「らんどせる?」

「小学校に通う時に使うカバン。それに勉強道具を入れて通うんだ」

「????」


ま、わかるわけがないよな。
たくもう、面倒くさい。


「あれ、何やってるの?」

「姉貴」

「あれー? それあんたのランドセルじゃん。どうしたの?」

「・・・結狐を小学校に通わせるから、発掘したんだ」

「学校!?」

姉貴はこれでもかというくらい目を開かせた。

「ちょ、いくらなんでも学校は無理でしょ?
この可愛い耳は? 尻尾はどうするのよ?」

「・・・ははっ」

「え?」

「姉貴は、どうやら俺と同じで性格はまともらしい」

「へ?」


やっぱ、親達はどこかが天然というか抜けているというか。
苦笑せずにはいられなかった。





「・・・ま、決まっちゃったものは仕方ないわね。小学校はどこなの?」

「陽流ヶ丘小学校だって。
あそこ、高校と向かいだろ?
何かあったとき、俺がすぐに行けるようにしたんだとさ」

「なるほどね。ま、妥当っちゃあ妥当かも。
でもさ、さすがに黒はちょっと結狐ちゃんの色じゃないでしょー」

「仕方ないだろ? 姉貴のは残ってないしさー」

「うーん・・・でもやっぱ結狐ちゃんは赤色が似合うわ。
赤にすべきよ」

「そんな事言われても・・・」


通い続ける事になったとしてもたった2年間。
新調するのははっきり言ってもったいないと思う。
・・・というか、俺の時代女子でも黒のランドセルの子はいたけど。


「・・・・・そうだわ!」


姉貴は何かを思いつくと、笑いながら空中を一回転した。


「身近にいるじゃない! ランドセルを残してそうな女の子がさ!」

「え?」


姉貴はこれでもかというくらいニコニコ笑っていた。



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