インターホンを押すと、ピンポーンという音が鳴り奥から馴染みの声が聞こえてきた。
『どちらさまですかー?』
「俺だけど」
『俺って人に知り合いはいませーん』
「・・・男前な幼馴染君ですけど!」
『私に男前な幼馴染君なんていません!
ヘタレな幼馴染君ならいますけど?』
「あーもー! どーせ俺はヘタレですよ!
さっさと開けろよ織香!」
『あはは! わかったわかった、ちょっと待ってて』
しばらくすると、ガラッと玄関の扉が開いた。
「どうぞ」
織香が笑いながら現れた。
「びっくりしちゃったよー。
いきなりランドセル残ってないか?なんて電話してくるんだもん」
「はは・・・悪いな」
「いいよ、別に。しなこのお礼もまだだったしね」
ああ、そういえば・・・織香の友達を助けてたんだっけ。
結狐がらみのことでさっぱり忘れていた。
「それにしても・・・」
織香はとなりで不思議そうにしている結狐の方を見た。
「妖怪が本当にいるっていうのは知ってるけど。
九尾みたいな伝説上の妖怪が本当にいるなんて思わなかったな。
しかも実際はこんなに可愛い女の子だったなんて!」
俺が夢で見たのは大きな狐そのものだったんだけどな。
と、心で呟いておく。
それにしても、姉貴もそうだったが女っていうのは小さい物には本当に弱いらしい。
結狐を見て誰もが可愛い可愛いと言っている。
・・・まあ、不細工ではないっていうのはわかるけど、そんなに愛おしく見る程なのだろうか。
女子の小さいもの好きの精神はよくわからない。
「・・・・・・・・・・」
「結狐?」
結狐は不思議そうに織香の顔をまじまじと見ていた。
「・・・・おりひめ?」
「え?」
「こーだい、この人、おりひめ?」
「おりひめ? おりひめって・・・神話に出てくる織姫のことか?」
「ううん、この人のことだよ」
「え・・・・わたし?」
結狐が指差したのは間違いなく織香であった。
「わ、わたしは織姫じゃないよ? 織香っていうの」
「おりか?」
「そう、織香。織姫の織に香るって書いて織香」
「おりか・・・? おひりめじゃないの?」
「うん、そうだよ。わたしと織姫様を一緒にしたら、織姫様に失礼だよ」
「にゅう・・・そうなの・・?」
「そうそう」
「にゅう・・・」
結狐の表情は納得したようなものではなかった。
なんでそこまで織香を織姫だと拘るんだろう。
そういえば烏羽さんの時も烏、烏とうるさかったっけ。
「・・・織姫様って」
しばらく考えていた織香がボソッとつぶやいた。
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